テント泊登山の疑問や悩みに答えるテント泊Q&A。
今回のテーマはダウンのシュラフ(寝袋)には欠かせない装備であるシュラフカバーについて。
「シュラフカバーの役割と効果は?」
「シュラフカバーは必要か不要か?夏の1泊なら?」
「シュラフカバーの選び方を知りたい!」
など、シュラフカバーに関する疑問を解決します。
Q1:シュラフカバーの役割と効果は?
シュラフを購入したときに、シュラフカバーを勧められたけど……
シュラフカバーってどんな役割があるの?
シュラフカバーは、ダウンのシュラフ(寝袋)が濡れるのを防ぐための防水カバーです。
主な役割/効果は3つあります。
結露や雨でシュラフが濡れるのを防ぐ
シュラフカバーの1番大きな役割は「結露や雨でシュラフが濡れるのを防ぐ」ことです。
シュラフの素材は大きく2つ(ダウンと化繊)に分かれます。
ダウンのシュラフは暖かく、軽く、しかもコンパクトに収納できるので、少しでも軽量&コンパクト化したいテント泊登山では欠かせない装備です。
しかし、その反面、水濡れに弱いという欠点があります。
特徴 | ダウン | 化繊 |
長所 | 暖かい 軽い コンパクトに収納可 | 水濡れに強い 洗いやすい 低価格 |
短所 | 水濡れに弱い 洗いにくい 価格が高い | 重い かさばる |
ダウンのシュラフは一旦濡れてしまうと、保温力が著しく低下し、しかも乾きにくので、使いものにならなくなってしまいます。
そんな、ダウンのシュラフの欠点(水濡れに弱い)を補う装備がシュラフカバーです。
結露については、↓こちらのQ&Aを参考に!
保温力の向上
シュラフカバーの2番目の役割は「保温力の向上」です。
シュラフカバーをつけることで、シュラフとシュラフカバーの間に空気層ができるため、保温力が少し向上します。
ただし、これはシュラフカバーの二次的な効果にすぎません。
一般に、シュラフカバーの保温力は2~3℃程度と言われていますが、体感できるほど暖かくなるわけではありません。
保温力を高めたいのであれば、インナーシーツ(ライナー)のほうが効果は高いですね。
インナーシーツ(ライナー)には以下のような製品があります。
汚れも防げる
シュラフカバーの3番目の役割は「汚れも防げる」です。
こちらも「保温力の向上」と同様に、シュラフカバーの二次的な効果です。
狭いテント内で調理や食事をしていると、汁が飛び散ったり、食事をこぼしたりすることがあります。
シュラフを濡らさないまでも、汁や食事のシミが付着してしまうと洗うのが大変です。
シュラフカバーをつけておけば、ウェットティッシュなどで汚れは比較的簡単に拭き取れます。
帰宅してから洗濯するのも簡単です。
Q2:シュラフカバー単体でも使用可能?
シュラフカバーって単体でも使用可能なの?
どんな使い方があるの?
シュラフカバーは単体でも使用可能です。
使い方としては以下のようなケースが考えられます。
ただし、単体で使用できるのは、3レイヤー(3層構造)のシュラフカバーに限られます。
2レイヤー(2層構造)のものは、耐久性が低いため単体使用には向きません。
シュラフカバーのレイヤーについては、「Q5:レイヤー」を参照のこと。
Q3:テント泊登山にシュラフカバーは必要か不要か?
シュラフカバーって必要なの?
不要なケースと必要なケースを教えて?
シュラフカバーが不要なケース
シュラフカバーはダウンのシュラフ(寝袋)を、結露や雨で濡らさないための装備です。
したがって、以下のケースではシュラフカバーは不要です。
- 化繊シュラフを使用している(水濡れに強く保温力が低下しにくい)
- 防水性の高いダウンシュラフを使用している
シュラフカバーが必要なケース
しかし、防水性のないダウンシュラフを利用する場合、以下のように寒い季節でも暑い季節でも、シュラフが濡れる可能性があるために必要です。
季節 | シュラフが濡れる状況 |
---|---|
寒い季節(秋~冬~春) | 外気温とテント内の温度差で結露が発生しやすくなる。 →結露でシュラフが濡れる。 |
暑い季節(夏) | 夏の天気は不安定。突然大雨に見舞われるケースがある。 →雨の吹込みや雨具の水滴でシュラフが濡れる。 →結露も発生しやすくなる。 |
夏場で天気が良ければ、結露が発生する可能性は低いですが安心はできません。
夏の天気は不安定なので、晴れていても突然雨が降り出すことはよくあること。
雨が降ればテントの中に雨が吹きこんだり、雨具の水滴でシュラフを濡らしたりする可能性は高くなります。
また、雨が降ると下記の理由で結露が発生しやすくなります。
つまり、季節に関係なく、ダウンシュラフにはシュラフカバーが必要なのです。
Q4:夏の1泊ならシュラフカバー不要か?
夏の1泊ならシュラフカバーは不要って本当?
よく、「夏の1泊ならシュラフカバーは不要」と言われます。
主な理由は下記2点でしょう。
たしかに、夏場は外気温が高く結露しにくいため、シュラフカバーを使用しないケースがほとんどかもしれません(天気が良ければ)。
たとえ結露でシュラフが濡れたとしても、次の日は下山するだけなので、1泊だけなら凌げるといった考えもあるようです。
しかし、Q3で説明したように、
夏でも雨が降れば、シュラフが濡れる可能性があり、結露も発生しやすくなります!
また、大雨になるとテントが浸水する恐れもあり、1日だけなら凌げるといったレベルではなくなってしまいますね。
シュラフカバーは夏の1泊でも、リスク回避には重要な装備になるので、使用しなくても持っていくことをおすすめします。
Q5:シュラフカバーの選び方を教えて?
シュラフカバーって、どうやって選べばいいの?選ぶときのポイントは?
3レイヤーと2レイヤーの違いやメリット・デメリットは?
シュラフカバーを選ぶときのポイントは以下の3点です。
シュラフカバーの素材
シュラフカバーの素材に求められるものは防水性と透湿性です。
シュラフが濡れるのを防ぐものなので、防水性は当然として、高い透湿性も必要です。
透湿性が低いとシュラフの中で温まった空気(水蒸気)が、シュラフカバーの内側で結露して、シュラフを濡らしてしまうからです。
なるべく、防水透湿性の高い素材を選びましょう。
シュラフカバーの素材として、もっとも適しているのがゴアテックスです。
ただし、ゴアテックスは価格が高いのがデメリットですね。
他にも、シュラフカバーメーカーが採用している防水透湿性素材も有効です。
レイヤー(3レイヤー/2レイヤー)
シュラフカバーには3レイヤー(3層構造)のものと、2レイヤー(2層構造)のものがあります。
基本は3レイヤーですが、軽量&コンパクト化のために裏地を省いた製品が2レイヤーです。
両製品の特長や違いは以下のとおり。
レイヤー | 特徴 |
---|---|
3レイヤー | ・表地+防水透湿素材+裏地の3層構造から成る ・生地が厚く耐久性も高い(単体使用が可能) ・裏地が湿気を吸収&拡散するため、透湿性も高くなる ・価格は高め |
2レイヤー | ・表地+防水透湿素材の2層構造から成る ・生地が薄いため軽量&コンパクト化が可能 ・耐久性は低い(単体使用不可) ・低価格 |
寒い季節の使用には、耐久性が高く透湿性も高い3レイヤーが適しています。
なるべく荷物を減らしたい、または、出費を抑えたい場合、2レイヤーという選択もありですね。
大きさ(レギュラー/ワイド)
シュラフカバーを選ぶ際には、大きさ(サイズ)も重要です。
シュラフのサイズよりもシュラフカバーが小さいと、シュラフ内のダウンが十分膨らまず、保温性能を十分発揮できないからです。
イスカやモンベルなどのシュラフメーカーでは、シュラフカバーのタイプを2種類(レギュラー/ワイド)が用意しています。
レギュラーは3シーズン用シュラフ対応、ワイドは冬季シュラフ対応がおおよその目安です。
タイプ | 対応シュラフ |
---|---|
レギュラー | 3シーズン用シュラフ |
ワイド | 冬季用シュラフ |
シュラフカバーは「大は小を兼ねる」ため、レギュラーかワイドか迷う場合は、ワイドを選択すれば良いでしょう。
Q6:おすすめのシュラフカバーを教えて?
おすすめのシュラフカバーを教えて?
おすすめのメーカーってあるの?
シュラフカバーはさまざまなメーカーが販売していますが、国産シュラフメーカーであるイスカのシュラフカバーが品質、信頼性が高くおすすめです。
(私もイスカのゴアテックス製品を使用しています)
現在、イスカのシュラフカバーのラインナップは以下の3種類です。
素材 | 製品名 | 備考 |
---|---|---|
ゴアテックス | ゴアテックス インフィニアムシュラフカバー ウルトラライト | |
ゴアテックス インフィニアムシュラフカバー ウルトラライト (ワイド) | 冬季シュラフ用 | |
ウェザーテック | ウェザーテック シュラフカバー スーパーライト |
いずれも、3レイヤー(3層構造)で単体での使用も可能です。
素材は防水性、透湿性が高いゴアテックス製品がベストですが、無雪期(春~夏~秋)での使用であれば、コストパフォーマンスに優れたウェザーテック製品でも良いでしょう。
あとがき
一般に、シュラフカバーは必須の装備ではないとされることが多いようです。
しかし、Q3~Q4で説明したとおり、季節に関わらず、シュラフが濡れるリスクは常にあります。
夏のテント泊では使用する機会は少ないかもしれませんが、リスク回避のために必要な装備です。
たとえ、使わなくても持っていれば安心ですね。
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