テント泊登山にトラブルはつきものです。
トラブルを自力で乗り切っていくのも、テント泊の面白さの一つなのですが……
不安や心配でテント泊に挑戦したくても、今一歩踏み切れずにいる人も多いのではないでしょうか(私もそうでした)。
でも、大丈夫です!
よくあるトラブルとその対処方法を知っていれば、トラブルを未然に防ぐことも、あわてずに乗り切ることも容易です。
ということで、私が今まで遭遇したことがあるトラブルや、ありがちなトラブルの対処方法をまとめてみました。
今回はテント設営/撤収編です。
1.テント装備を忘れた!
- Qテント装備を忘れた!どうしよう?
- A
登山開始前なら中止。引き返せない場所なら山小屋に相談しよう。
テント装備(テント本体、テントポール、フライシートなど)は代替えの効かない必須装備です。
忘れ物がないように、出発前に確認するのが基本です(チェックシートを作っておくのがベスト)。
しかし、もしテント装備を忘れてしまったら?
グループなら仲間のテントに同宿させてもらうことも可能ですが、
単独だったら?
忘れたことに気が付いた場所によって、下記のように判断しましょう。
気が付いた場所 | 対処方法(単独の場合) |
---|---|
登山開始前 引き返せる場所 | 登山開始前なら中止。引き返せる場所なら迷わず引き返す。 |
引き返せない場所 | テント場を管理する山小屋へ行って相談するしかない。 ・山小屋によって、テントを借りられるケースあり ・山小屋に宿泊可能なら、小屋泊に切り替える |
2.テントの張り方がわからない?上手く張れない?
- Qテントの張り方がわからない?適当に張っても大丈夫?
- A
天候が悪化したときに危険。周囲の人に手伝ってもらうか、山小屋泊に切り替えよう。
テント場でテントの設営に手間取っている人をたまに見かけます。
自分一人で張れるように練習しておかないと、実際にテントを張る段階になって、手間取ることが多いので注意してください。
最低でも1~2回、できれば4~5回、スムーズにテントの設営・撤収ができるように練習しておきましょう。
しかし、もしテント場でテントが上手く張れなかったら?
テントを適当に張ると天候が悪化したときに危険です(強風でテントが飛ばされたり、雨で浸水したり)。
恥を偲んで周囲の人に手伝ってもらうか、山小屋に宿泊できる状況であれば、山小屋泊に切り替えましょう。
暗くなると、テントの設営は余計に難しくなってくるので、明るいうちに対処するのが正解です。
3.ペグハンマーは持って行く?
- Qペグを打ち込むのに、ペグハンマーは持って行ったほうが良い?
- A
テント泊登山では、ハンマー代わりに石を使うのが一般的です。
ペグを打つのにペグハンマーがあると便利です。
しかし、ペグハンマーは重く嵩張るため、テント泊登山では持って行かないのが普通です。
テント泊登山では、手頃な大きさの石をハンマーの代わりに使用します。
地面が柔らかいテント場なら、登山靴のソールで地面に押し込む方法も有効です。
4.地面が固くてペグが刺さらない!
- Q地面が固くてペグが刺さらない場合は?
- A
大き目の石に張り綱を巻き付けて固定します。
北アルプスや南アルプスなどの標高が高いテント場は、岩稜地帯が多く、ペグが刺さらない場所がほとんどです。
固い地面に無理矢理ペグを撃ち込ももうとすると、ペグが曲がったり、抜けなくなったりするので避けましょう。
ペグが刺さらない場合は、下記の写真のように、大きな石に張り綱を巻き付けて固定すればOKです。
この時、張り綱の先(地面側)はエバンスノットで結んでおくと便利です。
エバンスノットの結び方は、こちら↓の記事を参考に。
5.テント撤収時にペグが抜けない!
- Q抜けなくなったペグを抜く方法は?
- A
張り綱や他のペグを利用して抜きます。
固い地面に無理やり刺したペグは、テント撤収時に抜けなくなることがよくあります。
次の2つの方法でほとんど抜けるので試してみてください。
1)張り綱を引っかけて抜く
張り綱を利用して、ペグが刺さっている方向と逆方向に引っ張ります。
左右、前後に動かしながら引っ張るとより効果的です。
2)ペグと引っかけて抜く
張り綱の代わりに、別のペグを使ってもOKです。
それでも抜けない場合は、ミニスコップやペグで、ペグの周囲を掘れば抜けやすくなります。
なお、使用したペグは必ず回収して持ちかえること。
折れたペグや、抜けなくなったペグを放置するのはマナー違反です。
6.雨の日のテント設営・撤収方法は?
- Q雨の日のテント設営・撤収方法のコツはある?
- A
荷物が濡れないように素早く作業すること。フライシートの活用も!
雨の日は、荷物やテント本体を濡らさないように素早く作業することが大切です。
テント設営・撤収をスムーズにおこなうコツは以下の2つです。
具体的なテント設営・撤収手順は以下のとおりです(ダブルウォールテントの場合)
テント設営
- STEP1
ザックからテント装備を取り出し、濡れないようにフライシートを被せておく
- STEP2
先に、テントポールを組み立てる(濡れても良い)
- STEP3
次に、テント本体を広げて、テントポールを装着する
- STEP4
テント本体を立ち上げて、フライシートを被せ固定する
- STEP5
ザックと荷物をテント内に入れる
- STEP6
張り綱を固定して、テント設営完了
※STEP3~5の作業を素早くおこなうこと
テント撤収
- STEP1
テントの中で全ての荷物をザックへパッキング(レインウエア、ザックカバー、テント収納袋以外)
- STEP2
レインウエアを着る(テント収納袋はポケットに入れておく)
- STEP3
ザックにザックカバーを装着して、テントの外に出す
- STEP4
テントを解体し、先にテント本体が濡れないようにザックへ収納 (*1)
- STEP5
その他のテント装備をザックへ収納 (*2)
- STEP6
最後にペグを回収して、テント撤収完了
※STEP3~4の作業を素早くおこなうこと
(*1) テント本体とフライシートは畳まずに、大きめのポリ袋等に丸めて突っ込む。
(*2) テント本体とフライシートは別々の袋に入れる(テント本体が濡れないように)。
なお、テントの設営・撤収には、レジャーシートがあると便利です。
レジャーシートの使い方は↓こちらをご覧ください。
7.強風でテントが張れない!
- Q風が強い!どうやってテントを張ればいいの?
- A
テント本体の4隅(風上→風下の順)を先にペグダウンするのが基本。ペグが刺さらない場合は石やザックを重石として利用します。
風が強い場合は、テントや装備が飛ばされないように、慎重に作業をおこなう必要があります。
一般的な方法
一般的な方法は、テント本体の4隅(風上→風下の順)を先にペグダウンするのが基本です。
これで、テントが強風で飛ばされることがなくなります。
その後、フライシートと張り綱を設置(風上→風下の順)すればOKです。
ペグが刺さらない場合
しかし、問題はペグが刺さらない場合です。
ペグが刺さらない場合は、石やザックを重石代わりに使用して、テントが飛ばされないように作業します。
具体的な作業手順は以下のとおりです。
- STEP1
テント本体の4隅に石を載せて広げる(風上→風下)
- STEP2
ザックをテントの中に入れる(重石代わり)
- STEP3
テントポールを組み立て、テント本体に設置する
- STEP4
テント本体を素早く立ち上げる
- STEP5
テント本体にフライシートを被せて固定する(風上→風下)
- STEP6
張り綱を張ってテンションをかける(風上→風下)
なお、単独ではなくグループの場合は、2人以上で協力してテントを張ったほうが安全で効率的です。
(1人が風でテントが飛ばされないように抑え、もう1人がテントを張っていく)
強風時のテントの張り方は、下記記事で詳しく説明しているので参考にしてください。
8.テントを張れる場所がない!
- Qテントを張れる場所がない!どうすればいいの?
- A
テント場を管理する山小屋に相談しよう!
人気のテント場や、幕営数が少ないテント場は、到着が遅いとテントを張れる場所がなくなっているケースがあります。
その場合は、テント場を管理する山小屋に相談しましょう。
次のような対応をしてもらえる可能性があります。
- 他のテントを詰めてもらって場所を開けてくれる
- 他にテントを張れる場所を案内してもらえる
しかし、どうしても場所が確保できない場合は、山小屋に宿泊せざるを得ないケースもでてきます。
9.テント/フライシシートが破れた!
- Qテント/フライシートが破れた!どうする?
- A
リペアシートで補修可能です。
テント本体やフライシートは、鋭利な石や突起物に引っかけて穴が空いたり、強風にあおられた際に破れたりすることがあります。
比較的小さな穴や破れであれば、下記のようなリペアシートがあれば、その場で補修可能です。
※一般に「タフタ」はテントのボトム用、「リップストップ」はテント本体やフライシート用。
リペアシートの使い方
補修箇所に合わせてリペアシートをハサミで切り取り、裏紙を剥がして貼り付けるだけ。
色は数種類用意されているので、テントの色に合わせて数枚(フライシート用、本体用、ボトム用)持って行くと良いでしょう。
ハサミも忘れずに。
10.テントポールが破損した!
- Qテントポールが破損した!応急処置は?
- A
リペアパイプとダクトテープがあれば応急措置が可能です。
テントポールは組み立て時のミス(差し込み不足、テントポールの上に乗っかってしまう、など)で破損することが多いですが、強風で折れる場合もあります。
テントポールが破損しても、下記のようなリペアパイプ (*1) とダクトテープ (*2) があれば応急措置が可能です。
(*1) リペアチューブ、リペアスリープなどの呼び方がある。(ペグでも代用可)
(*2) ガムテープ、ビニールテープでもOK
テントポールの補修方法
補修方法は下記のとおり。
1)破損した箇所に、リペアパイプをはめる
2)リペアパイプをダクトテープなどで固定する(今回はガムテープを使用)。
これで、テントポールの補修は完了です。
リペアパイプがテントポールに通らない場合
なお、私が所有している吊り下げ式のテント(ダンロップ・VS20)は、ポールの先端に丸いキャップ(スクリューボール)が付いているため、このままだとリペアパイプをテントポールに通せません。
このような場合は、以下の手順で、先端の部品を外してからリペアパイプを通します。
1)先端部品(スクリューボール)を回してはずし、ショックコード引き出す
2)ショックコードが引っ込まないように足で抑える。
3)先端部品を外す
4)ショックコードにリペアパイプを通す。
5)ショックコードに先端部品を取り付けて元に戻す。
これで、テントポールにリペアパイプを通せるようになります。
11.テント撤収後、テントがザックに入らない!
- Qテントを撤収した後に、テントがザックに入らない?
- A
ザックの容量は余裕をもった大きさを選ぼう。
ザックの容量に余裕がない場合にありがちなトラブルです。
一晩テントを張ると、雨や朝露でテントが濡れてしまったり、きれいに畳めていなかったりして、元のサイズより嵩張ってしまうことがあります。
ザックは荷物の容量ギリギリの大きさではなく、余裕をもった大きさを選びましょう。
大きめのザックのほうが、パンキングが楽だし、荷物も取り出しやすくなります。
なお、2気室のザックの底にテントを収納する場合は、下記のようにザックを逆さまにすると、パッキングしやすくなります。
ザックへのパッキングについては、↓こちらの記事も参考に!
あとがき
今回紹介したトラブルは、出発前の準備で避けられるものが多いです。
とくに重要なのは、テントの設営・撤収の練習を十分にしておくこと。
山の麓は天気が良かったとしても、テント場に着いた頃には天候が悪化しているケースはよくあります。
多少の雨や風でも、スムーズにテントの設営・撤収ができるようにイメージトレーニングもしておきましょう。
なお、テント泊の予定でも、テントを張れずに山小屋に宿泊せざるを得ないケースもでてきます。
山小屋の料金は素泊まりでも、8,000~1万円前後かかるので、テント泊の場合でも余分に現金を持っていきましょう。
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